群馬県 沼田市 玉原高原遊歩道

測定日:2019年5月17日 9:30~15:30 曇りときどき晴れ 南東1~3m

測定地:群馬県沼田市上発知町 玉原高原散歩道

測定方法 地上高5cm を歩行による移動測定、地上高5cm・50cmの定点測定

移動測定 平均空間線量 0.112μSv/h

2017年7月の測定では、ここのセンターハウスで1.4μSv/hのホットスポットを見つけました。これだけでここの汚染状態の把握は十分と考えていましたが、数年前から地元の保育園では遠足に行っていて、その園長先生から「どうでしょうね?」と相談され、今回は保育園の遠足コースを測定しました。

 


《 センターハウス ・中心広場》ホットスポットは解消したが、空間線量は高め 

 2017年7月の測定では、センターハウス前のベンチ広場で1.4μSv/h、中心広場のトイレ付近で0.23μSv/hのホットスポットを発見、沼田市に通報しました。沼田市はすぐに除染を実施しました。今回、改めて除染箇所の測定を行いましたが、ベンチ広場の除染箇所は0.1μSv/h以下で、除染の効果を確認しました。

 それ以外の部分に関しては、2年前との違いはほとんど感じられず、同じように高めの空間線量でした。ただし、沼田市の除染基準である0.23μSv/h(1m高)以上は計測することはありませんでした。

 センターハウスと駐車場の空間線量は問題ありませんが、それ以外はやや高めの空間線量です。昼食のために0.1μSv/h以下の場所を探しましが、なかなか見つかりませんでした。

写真1 案内板の前の空間線量はやや高めですが、駐車場の舗装面や建物の周囲の空間線量は問題ありませんでした。

写真2 駐車場前のやや土地が低くなった林間のベンチ広場の線量は全体的に高め。ここでの休憩はお勧めできません。

写真3 2017年7月、1.46μSv/h(沼田市調べ)のホットスポットをここで発見しました。当会からの通報を受けた沼田市は直ちに除染を実施、現在の空間線量は0.085μSv/hでした。杭を打ってロープが張られた3m四方ほどの狭い範囲ですが、ここだけ線量が下がっており、再汚染はありません。50cm高の線量のほうが高いのは、周囲の空間線量に影響されているためです。

写真16 中心広場の南側(地図では右端)です。2017年7月の測定で、写真16の地点では、0.23μSv/h(1m高)があり、沼田市は除染を実施しています。現在もトイレ付近の線量は高いのですが、沼田市の除染基準以下の値でした。除草もしっかりされ、整備されていますが、やはりここは利用したくない場所です。なお、センターハウスのトイレ付近は問題のない空間線量で、通常はこちらを利用しているようです。

写真17 写真16とトイレを挟んで反対側になります。かなりの空間線量ですが、これでも沼田市の除染基準は満たしません。それでも県の除染基準は1μSv/h(1m高)に比べれば、沼田市はまともです。この周辺は近づかないほうが安全です。

写真18 北側の隅にある案内掲示板、しかし地面は水でぬかっており、歩いて近づくと靴が濡れます。通常水の遮蔽で空間線量は下がるものですが、ここの空間線量はかなり高く、セシウムがたまって濃縮しているようです。

写真19 この広場は外周の縁だけでなく、中央の空間線量も高めです。草地(芝地)と砂利地がありますが、草地(芝地)のほうが空間線量は高いようです。セシウムが植物の根の土に溜まっているのかもしれません。

写真20 芝生がきれいに刈られた場所で、ロープを巻いた柱には「起点」と書かれています。何かのゲームの起点なのでしょうか。この芝生地の空間線量は周囲よりも高く、セシウム濃縮ポイントになっているようです。

中心広場で採取したツクシから76.9Bq/kg

 

 日当たりのよい中心広場には、一面に土筆が芽をだしていました。知り合いの埼玉北部の保育園では、春になると土筆を摘んで食べるそうです。毎年、測定して安全確認をしているようですが、ここ玉原高原のツクシはどうだろうかという興味で、測定の合間にレジ袋いっぱいの土筆を採取しました。

 土を落とすために、水洗いを2回して、一晩乾燥させた後、測定しました。2時間の測定で結果は

セシウム137:68.9Bq/kg

セシウム134:7.95Bq/kg

セシウム合計:76.8Bq/kg

となりました。玉原高原のツクシは、まだ食べられません。

 

 


玉原高原散歩道(保育園遠足コース)

写真4 センターハウスからここまでの空間線量は0.08μSv/h前後ですが、ここでは倍以上の線量で、セシウムがたまっているようです。

写真5 野鳥案内板から山道に入ると線量も下がり、ちょっと安心しました。

写真6 しかし、予想に反して山道の線量は高く、斜度が平らになった所や木の根元付近に放射能が濃縮しています。山道はほぼ0.1μSv/h以上、ところどころで0.2μSv/hを超えます。そして、とうとう道の中央で0.3μSv/hを越えるポイントが出現しました。木の根が張り出し、踏み砕かれた落葉の地面です。両わきの笹薮の線量は0.1μSv/h前後でした。

写真7 極端に高い線量ではありませんが、0.1μSv/h前後の空間線量が続きます。ときどき両脇の笹薮に放射線計を入れてみますが、山道よりも低めの線量です。一般に傾斜がきつく、岩場だとか、石だらけの山道の空間線量はあまり高くありません。この山道のように傾斜の緩い、落ち葉の積もっているような道のほうがセシウム(放射能)はたまりやすいようです。

 ●土壌から9620Bq/kg!

 写真10のポイントで採取した土壌です。0.1Lの測定ですが、放射性廃棄物の基準8000Bq/kgを超えました。空間線量

  0.234μSv/h(50cm高)

  0.325μSv/h(地表)

で、土壌放射能濃度が、これほどの値になります。

 2019年5月現在、空間線量の理論的減衰率は原発事故当時に比べ、28%まで落ちていますが、セシウムそのものはまだ1/2残っています。

 つまり、現在の0.23μSv/hは、以前の0.23μSv/hよりも危険度が高いわけです。

 今回の測定でも、空間線量が0.3μSv/h(地表)を超えるポイントは何か所かあり、こうした部分の土壌が8000Bq/kgを超えていることは十分に予想されます。

 

写真13 湿原に面した木道で、現在工事中でした。木道の上でも0.1μSv/h以上、試しに地面を測定すると倍以上の線量となりました。木道設置前はかなりひどい汚染だったと思われます。右の写真のように10cm厚の板で放射能が遮蔽され半分の値になっているようです。
 木道を敷く前の線量がどれほどだったかとか、さらには福島第一原発事故当時の線量がどれほどだったかと想像すると、恐ろしくなります。2019年5月現在、セシウム自体の自然減衰率は45%、そこから計測される空間線量の自然減衰率は28%です。(放射能濃度Bq/kgと空間線量μSv/hの自然減衰率は違う。)


《まとめ》

・福島第一原発事故から8年を経た今も、玉原高原遊歩道の空間線量は高い。放射能汚染度は、群馬県内の行楽地の中でも、最悪の部類と思われる。(他の群馬県のページを参照)

 

・空間線量の全体平均は、0.11μSv/hと極端に高いわけではない。しかし、放射能汚染の高い所と低い所の差がはなはだしい。特に森の中の通路は、坂の下や平坦部の、やや湿った地面の空間線量が高く、こうした部分にセシウムが濃縮しているものと思われる。

 

福島第一原発事故から8年を経て、事故直後を避けていた食品にしろ行楽地にしろ、「そろそろ大丈夫だろう、解禁! という判断をくだした」という話を、今回とは別の保育園関係者から聞きました。確かに大丈夫な場合もあると思います。しかし玉原高原は大丈夫ではありません。やはり測定してみないとわからないものです。 


群馬県 その他の測定ポイント

赤城山(大沼・小沼・覚満淵・地蔵岳)、川場村田園プラザ、沼田市民の森 

 

沼田市の除染基準:公園 50cm高 0.23μSv/h 通常は 1m高 1μSv/h